華とじぃじの中学受験

架空の公立中高一貫校「早乙女中学校・高等学校」を受験する女の子と祖父の物語

華・ウサギとカメのおはなし その4

      2017/03/15

「ただいまー」「おじゃましまーす」

華とハルトが学校からじぃじの道場(通称「朝ごはん塾」)に帰ってきました。

じぃじは読みかけの本から目を上げると「おーおかえり。まず上がらい。」と目を細めて二人を迎えてくれました。

長机の上には、ガトー小田原の「オトメスイーツ」が置いてありました。

水色の透明なカップの中にプリンと生クリームとフルーツが配置され、オトメ中の校章をあしらったビスケットがその上に乗っていて、オトメ中を受験する小学生の間で話題になっているお菓子です。

オトメ中の開校が近づき、地元レインボー商店街もにわかに活気づき始め、多くのお店でこのような企画を立ててオトメ中を盛り上げてくれています。

「ほほーっ、たいしたモンだ」

アヤネとの「100ます計算3本勝負」の様子をハルトから聞いたじぃじは、そう言って華をほめてくれました。

華は顔を赤くして、下を向いています。

「その子に恥をかかせなかったんだろ?」

じぃじは華の方を向いて、そう尋ねました。

ハルトは「えっ?」と驚いて華を見ると、華は小さく「・・・うん」とうなずきました。

「それでいい。
華の実力だったらな、その子を負かせることなんてたやすい。
でもみんながいるところでその子に勝ったらな、その子は恥をかくだろ。
その子に恥をかかせたらな、華へのイジワルはいっそう酷くなる。
そう思ったんだろ?」

華は下を向いたまま「・・・うん」とうなずきました。

ハルトは目を丸くして華を見つめています。

「人はな、どうしても勝ち負けにこだわるだろ?だから相手に勝とうとする。その子もそうだよな?」

「はい、でもそれが普通だと思います。」

じぃじの問いかけに、ハルトが答えます。

「華はな、勝ちよりも大事なことを選んだ。
勝てばスカッとする。でも今よりイジワルされるようになる。
負けたら負けたで、今と変わらずイジワルされ続ける。
だから引き分けにしたんだ。」

引き分けを選ぶ。普段から勝ち負けにこだわる事が多い男の子には思いもつかないことでした。

「それにな」じぃじが続けます。

「その子は華の実力を認めたはず。だから今後は華にイジワルできなくなる。勝負の様子はクラスのみんなが見ていたから、その子が華にイジワルしたら、逆にクラスから浮いてしまうようになる。さすがにそれはせんだろな。」

「ホント?やったー!」華が顔を上げて、じぃじの方を向きました。その顔はパーッと輝くような笑顔でした。

はな は ひきわけ を えらんだ!
はな は かつこと よりも だいじなもの を てにいれた!

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