華とじぃじの中学受験

架空の公立中高一貫校「早乙女中学校・高等学校」を受験する女の子と祖父の物語

華・魔法を憶える

      2016/03/02

「ただいまー」そう言って華はじぃじの道場に入ってきました。ママが帰ってくるのは5時過ぎで、パパは華が寝た頃に帰ってきます。だからいつも、夕飯までじぃじの道場で過ごすのです。

じぃじは昔、合気道の先生をしていました。道場にはおヒゲのおじいさんの写真が飾ってあって、じぃじはいつも「大先生(おおせんせい)」と呼んでいました。大先生の上には神棚があって、じぃじは毎朝パンパンと手を叩いています。大先生の下にはいつも、何本ものお酒が置いてありました。

その道場の端っこには折りたたみの机が置いてあり、華はいつもその机で宿題をしたり、本を読んだりして過ごします。その間じぃじも本を読んだり、鏡の前で木刀を構えたりして過ごします。華とじぃじが二人だけで過ごす、静かで大切な時間です。

「おわったー」宿題を終えた華が背伸びをすると、じぃじは「おっ」と短く答えて、熱いお茶を出してくれます。湯気を立てた、濃い緑色の渋いお茶。それにお団子とか、おはぎとか、甘いお菓子がついてきます。華はじぃじと二人で、お菓子をかじって、熱いお茶を飲むのが何より楽しみで、「かーうめー」「たまらんー」と年寄りみたいな言い方をしてはじぃじを笑わせます。

「口笛を吹くようにな、フィっと音を立てるんだ。そしてな、身体が大きな卵で包まれたような想像をするんだ。その卵は半透明で光っていてな、華を守ってくれる。嫌なものが近づいて来そうな時にな、フィってやるんだ」

華が小学校で辛い目に遭っているのを察したじぃじの言葉です。幼い頃からじぃじの言う事を素直に聞いてきた華ですから「うんわかった」と言って「フィっ」と音を立てました。それを聞いたじぃじが「ここでやらんでもいいだろ」と言うと、華はいたずらっぽく笑いました。

5時になると、母親の夏奈が帰ってきました。華は「じぃじ、バイバイ」と言って「フィっ」と音を立てながらアパートに帰って行きました。

はな は じぃじ と たいせつなじかん を すごした!
はな は じぶん を まもるまほう を おぼえた!

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